今回は、雇用保険「特定受給資格者」にかかる最近の法改正を取り上げます。
対象の範囲や基本手当の所定給付日数が変更されていますが、社労士受験から離れると、実務上あまり意識することが無くなる方もいらっしゃるかもしれません。顧問先からの質問、退職者予定者への説明に同席するといった際に最新の情報を提供できるよう、以下にまとめました。
特に所定給付日数の変更は、従業員の退職後の生活や求職活動にも大きく影響を与えるものですので、間違いのない情報提供を行う必要があります。
A「倒産」等により離職した者
(1) 倒産に伴い離職した者
(2) 事業所において大量雇用変動の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
(3) 事業所の廃止に伴い離職した者
(4) 事業所の移転により、 通勤することが困難となったため離職した者
B「解雇」等により離職した者
(1) 解雇により離職した者
(2) 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
(3) 賃金の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者:(昨年の法改正になります。以前は、支払いの遅延が2か月続くか、離職前6か月に3か月以上あることが求められていました)
(4) 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下したため離職した者
(5) 離職の直前6か月間のうちに
①連続する3か月で45時間、
②1か月で100時間
③連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者
また、事業主が危険・健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
(6) 事業主が法令に違反し、妊娠中・出産後の労働者又は育児・介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠・出産、それらの制度の利用やその申出等を理由として不利益な取扱いをしたため離職した者:(平成29年1月1日に施行された、いわゆるマタハラ防止措置についての指針に基づき、追加された内容です)
(7) 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
(8) 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
(9) 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
(10) 上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者
(11) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者
(12) 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
(13) 事業所の業務が法令に違反したため離職した者
(一部、簡素化した記載になっております。)
| 被保険者期間 | |||||
| 1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
給付基礎日数の変更が行われ、被保険者期間が1年以上5年未満で30歳以上45歳未満の特定受給資格者において、給付日数が手厚くなりました。以前は90日でしたが、現在は30歳以上35歳未満で120日、35歳以上45歳未満で150日と所定給付日数が増えていす。
開業部会協力委員 金光由美子